壁面を緑化する
一般的に壁面緑化とは、オフィスビルや家屋などの壁面を植物で緑化することですが、その他にも、高速道路などでよく見かける道路擁壁や三面張りの河川護岸、橋梁の橋脚などの土木構造物を緑化することも壁面緑化の一部です。壁面の緑化は、人工物で覆われた都市部において重要な緑化空間の一つです。壁面緑化は屋上緑化に比べて、面積が比較的確保しやすく
容易に緑化が可能なことから注目を集めています。
どのような効果があるのか?
壁面緑化に限ったことではありませんが、次のような効果が期待できます。1.植物の蒸散作用や二酸化炭素の固定、輻射熱の低減などによるヒートアイランド現象の軽減、2.建物を植物で覆うことによる建物の断熱性の向上(建物内の熱環境緩和)、3.構造物への直射日光を遮り、壁材の急激な温度変化による膨張や圧縮によって生じるひび割れや、雨・紫外線からの壁面の保護、4.二酸化炭素や窒素・硫黄酸化物などの大気汚染物質の低減、5.壁面の落書きやポスター貼りの抑制など、様々な都市の環境改善効果が期待できます。
壁面緑化にはどのような手法があるか?
代表的な壁面緑化の手法は ①登攀型、②下垂型、③基盤造成型 の3つがあります。①の登攀型は普段目にする機会も多く、最も施工事例が多い手法です。緑化したい壁面下の地面やプランターなどにつる植物を植え、生長にともないつるを壁面に付着したり、補助資材のワイヤー等に巻きつかせて緑化する手法です。②の下垂型は壁面の上部等に設置した植栽基盤から、つる植物を下に向かって垂らして緑化する手法です。この手法の場合、付着根を有する植物でも、ほとんどの植物種が壁面に付着することがないため、補助資材を利用して安定させる方法が一般的です。③の基盤造成型は植栽基盤と灌水を含む植栽システムを一体化した手法です。初期完成度が高く、多様な植物(草本・木本)を混植して植栽することが可能な方法ですが、イニシャルコストやランニングコストが登攀型や下垂型と比較すると数倍必要となります。このよう設置場所や目的に応じて、緑化手法を選定し、より適した手法を選択することが必要です。
壁面を覆うためにはどのくらいの期間を必要とするか?
基盤造成型は、圃場のおいて生育養生を行っている前提ですが、設置時にほぼ完成形にすることが可能です。登攀型や下垂型での緑化の場合、規模と導入する植物種によって異なりますが、一般的には数年が必要となります。つる植物が1年でどの程度伸張するかは、植栽場所の気象や土壌条件にもよります。年間伸長量はトケイソウやノウゼンカズラなど比較的生長の早いもので3m、オオイタビや各種ヘデラ類など遅いもので2m未満です。ただし、さまざまな条件により異なりますので、必ずしもこの長さが伸びるというわけではありません。
どのような植物が用いられるか?
壁面緑化では使用する手法によって植物の選定が異なります。登攀型および下垂型では主につる植物が、基盤造成型では草本類や木本類が利用されています。ここでは、登攀型や下垂型で使用されるつる植物に関してご紹介します。
【登攀・付着型】ヘデラ類、オオイタビ類、テイカカズラ、ノウゼンカズラ、ビグノニア
【登攀・巻付き型】カロライナジャスミン、ビナンカズラ、スイカズラ、ムベ、ツキヌキニンドウ、テイカカズラ、アケビ、トケイソウ、ビグノニア、クレマチス類
【下垂】ヘデラ類(特にヘデラ・カナリエンシス)、オオイタビ類、テイカカズラ、ノウゼンカズラ、ビナンカズラ、スイカズラ、ビグノニア、カロライナジャスミン、コトネアスター、ムベ、トケイソウ
通常、このような壁面緑化の施工には30cm苗を使用することが多く、数年~数十年をかけて目的とする壁面を緑化していきます。しかし、より早い段階である程度の被覆をご希望であれば、2.0m程度に生育させた[[長尺ポット苗]]を使用することで短期間での緑化が可能となります。