在来種で緑化シート
(ざいらいしゅでりょっかしーと)
日本国内で採集あるいは生産した種子のみを用いた植生シートです。一年草と多年草を組み合わせることで、早期緑化と長期にわたる緑化を可能にしました。標準配合はメヒシバ、カゼクサ、チカラシバです。
なぜ在来種?
日本には7,000種類もの植物が生育しています。それなのに,植生シートに使用されているのは外来種ばかり。なぜ,日本の在来種を使わないのだろう。様々な理由はありますが,最大の問題はそれを供給するメーカーが存在していないことです。ですから使う方もこれまで選択肢がありませんでした。とても単純な話ですね。ならば,エスペックミックで始めようじゃないか。ということで「在来種で緑化シート」の開発に着手しました。はじめは,どの植物を使えばよいか皆目見当がつきませんでしたが,試行錯誤を行いながら有力な候補をいくつか見つけることができました。
在来種で緑化シートは平場あるいは盛土用です。
造成した斜面には,土を盛り上げて造成した盛土(もりど)土地を削って造成した切土(きりど)があります。土質にもよりますが,盛土法面は比較的柔らかく植物が生育しやすい状況にあります。半面,降雨などで浸食が生じやすいため,法面を安定させるために早期の緑化が必要になります。一方,切土法面は固くそのままではなかなか植物は生育しません。この場合には植生基材(植物が発芽して生育できるような基盤となる材料)を吹き付けたり,植生基材の役割を果たす植生マットを設置する必要があります。今,私たちが販売している在来種で緑化シートは,種を蒔けば生育するような盛土法面にのみ使用できるもので,切土法面へは使用できません。盛土法面を浸食から守りつつ在来種で緑化を行うためには在来種で緑化シートがおすすめです。
※ 切土法面の場合でも工法の提案をさせて頂きます。是非お問い合せ下さい。
ワラシバタイプと植生シートタイプがあります。
在来種で緑化シートにはワラシバタイプと植生シートタイプの2つがあります。
※1)製品の形状や色などの仕様は予告無く変更される場合があります。あらかじめ御了承ください。
ワラシバタイプ
ワラが水分を保持するため種子の発芽がよいのが特徴です。ワラシバは付属の金目串で固定しますが,場合によってはワラシバが風でめくれ上がらないように紐をかけたり,砂をかけたりする必要があります。ワラはおおよそ1年程度で自然に分解されます。
植生シートタイプ
土壌流出を抑制する化繊のシートの裏に種子が付いた「種紙(たねがみ)」を張り付けてあります。化繊のシートは長期間にわたり浸食から表土を保護しつつ在来種で緑化を行います。植生シートは別売りの大頭釘で固定します。
植物の種類
現時点では「在来種で緑化シート」に使用している植物は一年草としてメヒシバ,多年草としてカゼクサとチカラシバです。いずれの植物も日本の各地に普通に生育している植物です。「在来種で緑化シート」に使用されている種子はエスペックミックの圃場で生産されたものか野外で採集したしたものとなっています。将来的には様々な環境に対応することができるように他の植物についても継続的に検討を行ってゆきます。
メヒシバ(Digitaria ciliaris)
メヒシバは日本全国の道端や畑地に生育するイネ科の一年生草本です。しばしば大群落をつくりますから,大量の種子を集めることができる植物の一つです。メヒシバは発芽率もよく,種子の吹付や植生シートでよく発芽します。エスペックミックではメヒシバを生産し種子を安定供給しています。
カゼクサ(Eragrostis ferruginea)
本州,四国,九州の空き地や道ばた普通に生育するイネ科の多年生草本です。種子は発芽率が高く初期成長の早い植物です。踏圧に強くグラウンドの隅に多く生育していることがあります。カゼクサは多年草において私たちが最も有望だろうと注目している植物です。野外で種子を採集することが大変なので,エスペックミックではカゼクサを生産し種子を安定供給しています。
チカラシバ(Pennisetum alopecuroides)
日本全国の道ばたなどに普通に生育するイネ科の多年生草本です。秋になるとタヌキの尻尾のような穂を出します。法面に群落をつくっていることもあります。種子が大きく発芽率も高いため法面緑化には有望な植物です。また、チカラシバはシカ不嗜好性植物、採餌耐性植物であるため、シカの食害が問題となっている場所で効果が期待できます。エスペックミックではチカラシバを生産し種子を安定供給しています。
名称 |
形状 |
配合種子 |
ワラシバタイプ(標準配合) |
W1.0m×L20m |
メヒシバ,カゼクサ,チカラシバ |
ワラシバタイプ(鹿不嗜好性配合) |
W1.0m×L20m |
チカラシバ |
植生シートタイプ(標準配合) |
W1.0m×L25m |
メヒシバ,カゼクサ,チカラシバ |
植生シートタイプ(鹿不嗜好性配合) |
W1.0m×L25m |
チカラシバ |
一年草が先に成長し,その後多年草が優占。
在来種で緑化シートは一年草と多年草を組み合わせることで,価格を抑えつつ早期緑化と長期にわたる緑化を実現しています。一年草は発芽率が高く初期成長も早いのが特徴です。一年草と同時に多年草も発芽成長しますが一年草よりも成長が遅いため,はじめはあまり目立ちません。しかし,翌年以降には一年草に置き換わって多年草が優占することになります。
下の写真では,7月27日時点では一年草のメヒシバが優占していますが,およそ1年後の6月28日には多年草のカゼクサとチカラシバが優占しています。
5月25日
6月29日
7月27日
10月26日
翌年の4月26日
翌年の5月23日
翌年の6月28日(約1年後)
大きい葉がメヒシバ,細くて小さい葉がカゼクサ。
メヒシバが枯れた時点でカゼクサが成長している状況。
在来種で緑化シートを設置すると,一年草も多年草も一斉に発芽します。一年草の方が成長が早いため,はじめは一年草が優占する緑となります。冬が近づくと一年草は種子を付けて枯れますが,その頃には多年草が成長し,翌年からは多年草が優占した緑地になります。
シカ不嗜好性植物による緑化
シカ不嗜好性植物配合タイプはチカラシバを中心とした植生シートです。ニホンジカの多く生息する西日本においてチカラシバが定着できるかどうか試験植栽を行いました。その結果,植物の定着後は,葉の一部は食害を受けるものの,株が大きく成長することが確認できました。また,穂は食害を受けにくいことが確認されたため,植物が定着すれば再生産が可能であることが示唆されました。在来種で緑化シートの鹿不嗜好性タイプはチカラシバを中心にした種子を配合したものです。
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設置時期は4~8月が適しています。
メヒシバ,カゼクサおよびチカラシバの発芽時期は4月から10月ころまで確認することができますが,9月以降は発芽はするものの,気温の低下とともに成長は遅くなり,発芽しても速やかな緑化が行われないため注意が必要です。
冬に設置すると翌年の春に発芽します。
工事工程の都合からどうしても成育適期に在来種で緑化シートを設置することができない場合があります。このような場合,種子は翌年の春以降に発芽します。その間は植物による法面の安定化が行われませんので,土壌の浸食に対して十分に注意を払う必要があります。
1月5日の状況。設置直後。
5月29日の状況。設置から4ヶ月後。
チガヤの種子の利用は意外に難しい。
チガヤはしばしば堤防法面に大群落を形成しており,堤防法面の緑化にはシバとともにチガヤが推奨されています。ならば,チガヤの種子を使ったらいいのではないだろうか?と誰しも考えますが,結論から申しますと,チガヤの種子の利用は以外に難しいのです。まず,チガヤの種子は高温多湿条件で発芽しますから,6~8月の播種に限定されます。3月に播種すれば翌年の夏期に発芽するのではないだろか?とも思うのですが,なかなかそうもいきません。チガヤが発芽する前に一年草の荒れ地雑草が一斉に発芽成長して,チガヤの発芽を妨げたり,発芽しても思うように成長できなかったりするからです。堤防法面にあんなに生育しているのになかなか難しい植物です。それから,あの綿毛の処理が困難で,綿毛を処理しなければ植生シートに加工することができません。ですから,エスペックミックではチガヤをマット状の苗である
チガヤマット や,小さなセル苗の
ルートボール・ミニ として利用できるようにしています。
ススキは萱株苗を植栽する。
ススキの種子は植生シートや種子吹きつけで多く用いられてきましたが,野外ではあまり発芽しないなどの報告があります。発芽する場合もあるので,種子のロットや播種時期に依存するのかも知れません。これまで中国産のススキの種子が大量に用いられてきました。しかし,現在では輸入が停止されているため,流通しているススキの種子は日本国内で採取されたものとなっています。そのため,外国産のものと比べてかなり高価なものとなっています。こうした状況から,現時点ではエスペックミックではススキの導入はススキのセル苗である
萱株苗 を用いることをお勧めしています。今後,ススキの種子については発芽実験などを行い,安定して発芽を確認できるようになった時点で在来種で緑化シートに用いたいと思います。