チガヤ-ススキ草地をつくる
チガヤ・ススキ草原は放置しておいても自然に形成される場合もありますが,セイタカアワダチソウやなどの外来種を中心とした群落が形成されることもあります。より確実にチガヤ・ススキ草原を創出するには何らかの方法によってチガヤやススキを導入する必要があります。
チガヤやススキの種子吹付は意外に難しい
チガヤの種子
ススキの種子
最初に思いつく最も容易な方法は種子吹付です。しかし,いくつかの問題によりこの方法は確実とは言えません。1つ目の理由は,特にチガヤについてですが,大量の種子の入手が困難なことです。ススキについては現在,外国産の種子は輸入されていないため,流通しているものは日本国内産となっていますが,国内産の種子は外国産のものと比べて201かなり割高となっています(2016年時点では国内産種子の価格は外国産の10倍)。そのため従来に比べて多量の種子を吹き付けることが難しい状況にあります。2つ目の理由は,チガヤやススキの場合,吹き付けた種子がほとんど発芽しない場合があることです。ススキやチガヤの種子自体は良く発芽しますが,現場の条件や施工時期によっては種子が発芽しない場合があります。つまり,工法として確立された外来種と比べると,ススキやチガヤの種子吹付にはまだまだ不確定要素が多いと言えます。また,種子吹付全般に言えることですが,降雨によって種子が流出する場合があります。こうした状況から,チガヤ-ススキ草原を創出する上で,種子吹付は効果的な方法とは言えません。
短時間でチガヤ-ススキ草原を創出する
短時間でチガヤ-ススキ草原を創出するためには,あらかじめ育成させた
チガヤマットの設置が効果的です。ススキはφ2cmの小さな[[萱株苗]]を植栽するか,φ27cmの大型ポット苗である
ルートボール・メガを植栽することで導入することができます。設置する場所にもよりますが,土壌の浸食の恐れがない場所では
チガヤマットは10~50cmの隙間を開けて設置しても良いでしょう。あるいは
在来種で緑化シートと組み合わせて使用することも出来ます。
チガヤマットにより創出した草地
時間をかけてチガヤ-ススキ草原を創出する
ある程度時間をかけることができる場所であれば,メヒシバやカゼクサの
在来種で緑化シートを設置して対象地全域を在来種で緑化するとともに,φ2cmのチガヤの
ルートボールミニやススキの
萱株苗を1㎡に数ポット植栽すれば良いでしょう。ススキは株立ちになる植物で株が大きくなりますが,チガヤは地下茎で分布を広げる植物ですので,適切な維持管理がなされていれば次第に群落を拡大させてゆくことになります。
土質条件によって状況は異なります
貧栄養条件でもススキは良く成育する
貧栄養で種子がほとんど含まれていない土壌の場合(例えば関東ロームなど),放置しておいてもなかなか植物は生えてきません。こうした条件では,貧栄養であるため成長は遅いですがチガヤやススキが優占します。一方,河川の氾濫などによってできた肥沃な土壌では,チガヤやススキも成育できますが,その他の競合する植物も良好に生育します。こうした状況では植生遷移が早いため,放置しておくとチガヤやススキに替わって別の植物が優占するようになります。そのため,チガヤ-ススキ草地を維持するためにはが適切な維持管理が必要になります。
チガヤ-ススキ草地を維持管理する
条件によって異なりますがチガヤ-ススキ草原を良好に維持するためには適切な維持管理が必要になります。維持管理方法は草刈が主体となります。チガヤの場合1年に2回程度(6月頃,9月頃)の草刈りを行えば群落を維持することができます。一方,ススキの場合1年に1回程度の刈り取りを行います。ススキの場合,注意しなければならないのは生育期である夏季に刈り取りを行うと株がかなり衰退することです。逆にこうした生態的特性を把握すればススキが大型になるの抑制することもできるでしょう。また,少し難しいのはチガヤは1年に2回程度の刈り取りが適しており,ススキは1年に1回程度の刈り取りが適していることです。両者を共存させるためには刈り取り頻度を年ごとに変えたり,エリアによって刈り取り頻度を変えたりするなどの工夫が必要になります。