広島県の治山事業における事例

~シカ不嗜好性植物による緑化~


施工からおよそ1年後の状況 施工からおよそ1年後の状況。チカラシバを植栽した範囲(写真右半分)と一般的な種子吹付(外来種)を行った範囲(写真左半分)とでは、緑化の程度かなり異なることが分かります。


 シカ(鹿)の食害を受ける立地において、シカ不嗜好性植物による緑化が試みられました。今回、シカ不嗜好性植物として用いられたのはチカラシバです。シカ不嗜好性植物はシカが好まな植物ですが、シカの生息密度が非常に高い場所の場合には食害を受ける場合があります。今回の現場ではシカの糞が多数確認されているこから、それなりの数のシカが生息していることが確認されています。導入したチカラシバも若干の食害を受けたものの、施工からおよそ1年後には植栽範囲の緑化が確認できました。
 今回、チカラシバは種子と苗(萱株苗)によって導入されました。種子は播種してからおよそ2週間で発芽が確認され、植栽した苗においてもその頃までには定着が確認されました。苗で植栽したチカラシバは植栽から3ヶ月後の2017年10月には開花結実が認められましたが、花茎や種子の植栽は見られませんでした。チカラシバはシカ不嗜好性植物であるとともに、採餌耐性植物でもあると言えるでしょう。

多数のシカの糞が認められた。 現場には多数のシカの糞が認められました。

食害を受けた地下r芝 チカラシバでも食害を受けることが確認されました。

チカラシバの根 チカラシバの根。
 チカラシバの生育状況を確認するために種子と苗で導入した植物を掘り上げてみると、いずれも根が非常に発達していることが確認できました。チカラシバはこのように根を良く発達させるため、シカによる植物体の引き抜きに対して強い可能性があります。また、密度の高い根は土壌を緊縛するため浸食を防止する効果が期待されます(写真左:チカラシバの実生苗の根、右:苗で植栽したチカラシバの根)。


施工からおよそ1年後の状況 施工からおよそ1年後の状況。2018年10月。

施工前の状況 施工前の状況。2017年7月。