生物多様性に配慮した工事

何よりも工事と生物多様性の両方に対する理解が大切だと思います。

 何らかの工事を行う際、既存の生態系に対して大なり小なり影響を与えることになります。対象地が在来種の豊かな環境である場合もありますし、外来種で構成されている場合もあります。生物多様性を配慮して工事を行う場合、前者の場合、自生している植物を確保したり、表土を保全したりするなど施工後速やかに既存生態系が修復されるような取り組みが求められ、後者の場合には外来種を除去して在来種に置き換えるなどの取り組みが求められます。しかし、実際の現場ではこうした取り組みはなかなか難しく、工事担当者に生物多様性や植物に対する知識がなかったり、環境調査を行う専門家に工事についての知識が無かったりして、打合せをしても意思疎通ができない場合がかなりあります。エスペックミックでは生物について学んだ人材が植栽工事などの分野で活躍しているため、工事と生物多様性保全に関わる知識と技能を備えています。ですから工事担当者と環境調査専門家との間に立って双方の専門的な話を通訳し、どのように課題を解決するかより具体的な提案を行うことができます。

日本の在来種で緑化を行う


 何らかの開発が行われると,多くの場合そこに法面(のりめん)が形成されます。法面は放置しておくと降雨により浸食されたり崩れたりして危険なため,植物による速やかな緑化が必要になります。この場合,種子吹き付けや植生シートなどによる緑化が行われていますが,今日に至るまでこれらの工法にはほとんどの場合外来種が用いられています。全ての外来種が問題となるわけではありませんが,できれば日本の在来種で緑化を行いたいですね。しかし日本の在来種を用いる場合大きく2つの問題があります。1つはどの植物を用いて良いかが分からない,もう1つは種が市場に安定供給されていないことです。ですから私たちは使用できる植物種の探索を行うとともに,自社の圃場で種子の生産を開始しました。今後,緑化用種子や植生シート(在来種で緑化シート)などの市場への製品の供給だけではなく,在来種の種子を用いた種子吹き付け工も行うこととしました。在来種による緑化を考えているのであれば是非お問い合せください。 お問い合わせはこちら

現地発生の材料を活かす


 工事においては現場でできるだけゴミを出さない取り組みはとても大切です。私たちはさらにもう一歩進んで,SDG's(持続可能な開発目標)の視点から,現地にある廃材や伐採した樹木,あるいは生育している植物を使った工事に取り組んでいます。確かに色々と手間はかかります。例えば草地を創るのであれば,一般的には重機で整地を行って張り芝や種子の吹き付けを行います。現場に生育している植物を剥がして,養生し,そしてそれを再利用することはとても大変です。しかし現地に生育する複数の植物を用いることができるメリットがあるだけではなく,ゴミの搬出や資材の搬入にかかる運搬に伴う燃料消費が減ります。

生物多様性のある庭をつくる


現場の廃材利用
普通に生育する山野草(雑草)でつくった庭

 最近では少なからぬ人たちが生物多様性保全に関心を持っています。小さなどのように生物多様性保全に取り組めば良いのでしょうか。あまり難しく考えなくても大丈夫です。自分の庭ですから好きな植物と一緒に暮らせばよいと思います。しかし手入れの手間が大変そうですね。確かに,季節ごとに咲く色とりどりの花を植えると,その維持管理には結構手間がかかりますね。そこで日本の山野にごく普通に生育している,いわゆる「雑草」と呼ばれる植物を使ってみてはいかがでしょうか。実際に植えてみるとその小さな花が意外に可愛らしいものです。維持管理は,好みに合わない植物を除草しても良いのですが,どうにもならなくなったら一気に草刈機で刈り払ってしまいます。こんな力の抜けた庭には様々な生き物が訪れるようになります。是非,嫌いな生き物でも殺虫剤など使わずに観察してみてください。少しずつ生き物のバランスがとれてくることに気がつくかも知れません。こんな楽しみのある庭も面白いですよね。

維持管理とセットで工事を考える


 生物多様性の保全を考えた場合,その後の維持管理を踏まえた上で工事を行うことが大切です。特に,工事の後,お客様が維持管理を行う場合には,維持管理に多くの費用がかからないような提案が必要になります。例えば工場跡地などの広い敷地の緑化を検討している場合,維持管理費に多くの費用が掛けられない場合,私たちは森にするか草地にするかを提案しています。小さなポット苗木を植栽して速やかに樹林化してしまえば下草がほとんど生えなくなりますから維持管理は容易になります。植栽する樹種をうまく選定すれば様々な生き物がそこを生息空間として利用します。一方,草地の場合は自走式の草刈機を使えばかなり広い面積でも僅かな時間で草刈を行うことができます。刈り草は細かく粉砕されるため集草などの作業は不要となります。今日,安定した草地が減少していますが,草地を維持することで草原性の生き物がそこを生息空間として利用するでしょう。

外来種が繁茂している場所を在来種植生に変える


 現在外来雑草が繁茂している草地を在来種草地に変えたいというご要望を頂くことがあります。ただ単に在来種を植栽すれば良いかというと、ことはそう簡単ではなくなかなか難しい課題と言えます。私たちが携わった天竜川の堤防法面の事例は大規模な改修に伴うものでした、土壌の物理的条件を変えることによって成立植生の変更を図りました。現場の観察から河川堤防法面は一面オオキンケイギクが生育していたのですが、すぐ近くの道路法面や水田の草地にはほとんど生育が見られませんでした。オオキンケイギクの優占している環境条件は礫質で強く乾燥する条件でしたので、堤防の改修で腹付に使う土壌(真砂土)は細粒分の少ないものとし、空隙を確保して保水できる材料を混合したもの使いました。そして,マット状のチガヤ苗であるチガヤマットを敷設することで一気に緑化を行い,再びオオキンケイギクが定着しにくい条件をつくりました。

天竜川の事例を詳しく見る >

天竜川堤防法面緑化の事例 2010年10月。施工前の状況。
天竜川堤防法面緑化の事例 2012年7月。施工後の状況。